アルカリ水の電解実験
(1) 水電解の予備実験(電極の試験):
銀電極(φ0.8銀線をソレノイドにしたもの)で1%硫酸を4〜10Vで電解すると、硫酸銀は水に難溶性なはずなのに、銀陽極は腐食し、陰極にはスポンジ状の銀が析出する。
また、ニッケル電極(0.3t×20×40mm)でアルカリ溶液(1%炭酸ソーダ・Na2CO3水溶液)を4〜10Vで電解すると、ニッケル陽極は腐食し、陽極の下にはニッケルの水酸化物や酸化物が沈殿する。(沈殿物が塩酸に溶けることでニッケル酸化物であることを確認)
したがって、アルカリなどの希薄溶液の電解でさえも、陽極には耐食性の高い白金族の電極が必要である。(一般に、めっき工業などでは、不溶解性陽極として白金めっきチタン網を使用する。) 今回は、手持ちの
イリジウムめっきチタン網(巾25×35mm ・・・ フィリピンの化学工場で触媒として使用されているもの)を、銀線で圧着してエポキシで覆い、実験用電極に使用した。(イリジウムは白金よりも反応性が鈍く、王水に溶けず、高温のフッ素や酸素としか反応しない。)
(2) アルカリ電解水の試験:
実験するアルカリ電解水は、1%重曹(NaHCO3)水溶液200mlを300mlビーカーに入れ、(1)のイリジウムめっきチタン網電極で、DC10V(極間距離:約3cm・約0.4A)で12時間電解して作成した。pH測定や油振とう実験の時には、電解で減少した水分を足して用いた。
1) pH:
炭酸アルカリ水溶液を電解すると、pHが上がるのは、電解に伴いCO2が抜けるためにアルカリ性の度合いが高くなるためである。油との混合性は、pHが上がった効果によると考えられるが、溶存水素の影響などもあると思われる。
溶液 | 実験したNaHCO3 電解水 |
市販の弱アルカリ 電解水 |
水道水 | 1%NaHCO3 | 1%Na2CO3 | 中性洗剤2滴 /100ml |
pH | 10.69 | 9.95 | 7.34 | 8.16 | 11.12 | 7.43 |
2) 油振とう試験:
水溶液10ml + 食用油(キャノーラ油)1ml を試験管に入れ約1分間激しく振とうし、その後放置した経時変化を見る。
作成したての電解水、市販の電解水、1%炭酸ソーダ(Na2CO3、洗濯ソーダ)水溶液は、振とう直後はよく混ざるが、短い時間で油が分離する。中性洗剤(台所用;* 界面活性剤; アルキル・ベンゼンスルホン酸Na 18% (+ 発泡剤; ポリオキシ・エチレン・アルキル・エーテル))も発泡剤のため泡が立つが、同様にすぐに油が分離している。
市販のアルカリ電解水は、(時間が経っているためか)それほど著しい鹸濁性能を持つというほどでもない。
重曹(NaHCO3)水はほとんど変化しない。
結局、油の鹸濁力を比較すると、
重曹水 << 炭酸ソーダ溶液、 市販のアルカリ電解水 < 中性洗剤、 実験した重曹電解水(電解したて) のようになった。
実験したアルカリ電解水は、同濃度の炭酸ソーダ水溶液よりも、pHが低い割に、油をより鹸濁する能力がある。